2009/09/02

竹内 薫『理系バカと文系バカ』

竹内 薫(著)『理系バカと文系バカ』を読んで感じたこと。文系理系の距離よりも、理論屋と実験屋の距離の方が遠いかもしれないということです(苦笑)。

理論屋はどちらかというと演繹的な思考を得意として、実験屋はどちらかというと帰納的な思考が得意な人がなるというイメージがあります。それを再度確認させられたのは本書の次の分です。

「物理学」を敬遠するのは文系人間だけではない。理系人間のなかにも「物理学」に拒絶反応を示す人たちがいる。それは「生物学」の人たちだ。「生物学」に進んだ人は生き物が好きな人はもちろんだが、「物理学」と「数学」が嫌いで「生物」を選んだ人が意外と多い。そのため「物理学」や「数学」を毛嫌いしている人も多い。

生物系の人で、「物理学」や「数学」を「嫌い」なタイプって、いくつかあると思いますが、そのひとつは本書の中に書かれているタイプです。

以前、生物学者の池田清彦さんのこんなエピソードを聞いたことがある。池田さんも、xが入ってきた時点で数学が分からなくなったそうだ。原因は「x=1というのは何か」というものだ。池田さんは、「イコールというのは同じことだろう。<1=1>は分かる。1が1と同じになりイコールは分かるんだけど、xと1は違うのに、なぜ<x=1>なんだろう?」。ここで分からなくなったそうだ。実は数学は、根源的にものを考える人ほど、分からなくなる。

で、「数学」や「物理学」の授業はというと、「このように考えるものだ」とどちらかというと演繹的に進められていって、その「なぜ」が解消されないまま進んでしまう。それで、「数学」や「物理学」に嫌気がさした人が、観察される現象の「なぜ」をひたすら追求する学問である生物学に流れてきているのでしょう。まあ、とはいっても、「物理学」や「数学」の知識がないと実験データを読めませんから、生物学でも物理学や数学の知識はある程度必要とされるんですけどね。

あと、生物学の場合、実験環境の統制には限界がありますから、統一理論とか綺麗な数理モデルを作ろうとする指向はどちらかといえば弱いですし。綺麗な数理モデルが役に立つ分野は限られていて、ひたすら実験・観察結果から事実を積み上げていくという分野の方が圧倒的に多いですね。そのため、「嫌い」というよりも自分の分野ではあまり使えないと思ってスルー気味のタイプの人も多いかと思います。

そしてこの本を読み終わって感じたこと。著者の竹内さんってどちらかといえば理論屋さんだなあと(苦笑)。