2011/01/07

志村 五郎『数学をいかに使うか』

大学時代、線形代数とか複素解析とか習ったときに、なぜこのように考えるかという点についてずいぶんと悩んだ記憶があります。多変量解析を理解する上で線形代数の知識が必要とされたり、回転がすっきりと表現できたりとか、後になって教えられた内容の意義について理解できたのですが。真面目な方は履修しなければいけないことと捉えて特に疑問も抱かずに通り過ぎるのでしょうが、私には結構な苦行でした。多分、自分の興味がある分野との繋がりが見えていれば、もう少し真面目に取り組めたのでしょうが。

志村 五郎(著)『数学をいかに使うか』は、証明の楽しさを強調する数学者の方が多い中にあって、「使える」ことを重視するというやや異色の立場で書かれた本です。著者は、フェルマーの最終定理の証明の話に出てくる谷山・志村予想を提出したことでよく知られた方で、それもあって年末年始に読むにはよさそうだと思い手にとってみました。

本書を書くに当たって著者がとった立場は明快です。

普通の教科書に書いていないが、面白い事、あるいは知っておいたほうがよいことがあるのでそれを書く。そして数学を「どう使うか」という態度で書く。言いかえれば「使えない数学は教えなくてよく、学ばなくてもよい」ということを説明する。

(本書 p.3)

その観点から著者は次のテーマを選び出しています。

  1. 線形代数の使い方
  2. Hermite行列その他
  3. ベクトル積から外積代数まで
  4. 四元数環の重要性
  5. Clifford代数とスピン群
  6. 複素解析、特に楕円関数
  7. テータ関数と保型形式
  8. Riemannのテータ関数とDedekindのη
  9. Lebesgue積分とFourier解析
  10. Fourier変換からメタプレクティック群へ
  11. 代数でなにを教えるべきか

(本書 目次抜粋)

もちろん証明を軽視しているわけではなく、本書の中でも必要に応じて証明が示されていたり、読者に向けた問題が出されていたりします。

要するに数学は学ぶにせよ教えるにせよ、決められた伝統的な段階をふんできっちりとやらなければならないものではない。特に「何でも厳密に」などと考えてはいけいない。これは教育上で言っているのであって、厳密でなければならない場所はもちろんある。

(本書 p.4)

数学に割ける時間は限られている以上、その有限な時間を最大限有効に使うためには、何が重要で何を教えるべきか、考え直したほうがよいのではないかというのが、著者の主張であり、本書から読み取って欲しいと著者が願っていることでもあると思います。

具体的にには何が重要かについて、本文の中からいくつか記述をピックアップしてみます。

Lebesgue積分も複素解析も、その易しい部分は大学の一般初年級の微積分に含めてもよい時代になっているのではないかと思う。

(本書 p.4)

四元数環Hはそれだけで非常に重要なもので、実数体R、複素数体Cの次に自然に出てくるものであり数学教育のかなり早い段階で教えられて良いと私は思う。

(本書 p.61)

そんなことに時間を費やすよりは外積代数、微分形式、外微分などの易しい場合の使い方を教えたほうがよい。

(本書 p.61)

たとえば有限群の表現論などは、Galoisの理論よりも先に教えられてよいように思う。

(本書 p.135)

そんなことを教えるよりも、Hamiltonの四元数環の重要性を教えたほうがよいと私は思う。

(本書 p.138)

四元数のように、一見何のために複素数よりさらに複雑な概念を導入するんだろうと見えても、導入したほうが簡潔に表現できるだなあと納得。

他の分野での利用を考えると、確かにルベーグ積分や複素解析は基本的なところは早めに習ったほうがよさそう。厳密に進めていてはそこまで進むことはなかなか出来ないので、既存のカリキュラムでは厳密に進めているところでも、敢えて自明として先に進んだほうがよいかも。どのように使えるかが理解できてその後の学習のモチベーションが変わってくるでしょうし。厳密にやらなければいけいないことも後になって出てくるでしょうが、全体が見通せた上で取り組んだほうが取り組みは容易になるのではないでしょうか。普通の人には全てにおいて専門家になるなんで無理ですから。

2011/01/03

餅を喉に詰まらせたときの救命法

今年も餅を喉につまらせて亡くなった方が出ていることが報道されています。

このような記事を見ると、「お年寄りは餅を食べないでくださいと表示すべきだ」とか、「喉につまらない大きさで販売するよう規制すべきだ」とか皮肉を言いたくなります。そんな皮肉ばかり言っているのも何なので、餅を喉につまらせたときの対処法について、今どのように指導されているか調べてみました。

まずは119番通報して救急車を呼ぶことが第一ですが、救急車が到着するまでの間に出来る応急処置が日本医師会のサイトで紹介されています。

まずは反応のある場合については異物除去を試みます。反応がない、つまり心肺停止状態の場合は、まずは心肺蘇生を試みます。

異物の除去法については、「腹部突き上げ法」と「背部叩打法」があります。

  • 患者が、呼びかけに応じることができる場合です。
  • 救助者が一人だけの場合は、119番通報する前に、異物除去を行います。
  • 異物除去には、「腹部突き上げ法」「背部叩打法」があります。
  • 異物除去は、可能であれば、「腹部突き上げ法」を優先し、一方で効果が無ければ、もう一方を試みます。異物が取れるか、意識が無くなるまで続けます。
  • 妊婦や乳児では、腹部突き上げ法は行いません。背部叩打法のみ行います。
  • 日本医師会 - 救急蘇生法サイト:気道異物除去の手順

そのやり方について図入りで解説されていますので、いざという時のために事前にそのやり方を覚えておいたほうが良いでしょう。ことが起きてしまっては冷静な行動ができなくて、やり方を見てここで紹介された方法を実施するとかまず出来ませんから。

腹部突き上げ法は次のような方法です。

妊婦や乳児では、腹部突き上げ法は行いません。
背部叩打法のみ行います。

  1. 患者の後ろに回り、ウエスト付近に手を回します。
  2. 一方の手で「へそ」の位置を確認します。
  3. もう一方の手で握りこぶしを作って、親指側を、患者の「へそ」の上方で、みぞおちより十分下方に当てます。
  4. 「へそ」を確認した手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。
  5. 腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓を傷める可能性があるため、救急隊にその旨を伝えるか、すみやかに医師の診察を受けさせてください。

日本医師会 - 救急蘇生法サイト:気道異物除去の手順

背部叩打法は次の方な方法です。

  • 患者の後ろから、手のひらの基部で、左右の肩甲骨の中間当たりを力強く何度も連続して叩きます。
  • 妊婦や乳児では、腹部突き上げ法は行いません。背部叩打法のみ行います。

日本医師会 - 救急蘇生法サイト:気道異物除去の手順

あと、反応が無い、つまり心停止しているおそれがあるときは心肺蘇生法を行うことが優先です。

あと、心肺蘇生法を試みているときに異物が出てくることがあります。

心肺蘇生を行っている途中で異物が見えた場合は、それを取り除きます。見えない場合にはやみくもに指を入れて探らないで下さい。異物を探すために胸骨圧迫を中断しないで下さい。

日本医師会 - 救急蘇生法サイト:気道異物除去の手順

一応簡単に情報をまとめてみましたが、多分見ただけではそのやり方をつかむことは難しいと思います。方法の説明にもあるように、腹部突き上げ法では腹部の内臓を傷つける恐れがあります。また心肺蘇生法で行う心臓マッサージは、「胸骨圧迫」とあるように胸骨を骨折するリスクがあります。しかしながら骨折を恐れていて十分な力をかけられなければ、肝心の心肺蘇生が失敗に終わってしまいます。昔心臓マッサージを教えられたときは、「骨折を恐れるな」と教えられたことを思い出します。事前にそのやり方を体験していないと、いざという時に適切に救急蘇生法を行えないと思うので、医師会、消防署等が実施している講習を受けるなりしたほうがいいでしょう。

掃除機を使って吸いだす方法も有りますが、その有効性については賛否両論があります。粘性が高くて気管に粘着した餅は掃除機では吸い出せないとか。それ故か標準的な指導書には掲載されていません。

ただ、掃除機の使用については考慮すべきという意見もあります。

1)ハイムリック法には重篤な合併症をおこす危険がある。

2)掃除機は考慮すべき器材である。 3)気道異物防止には啓蒙が最良の方法である。

ハイムリック法と掃除機 - 最新救急事情2000/03月号

普通の掃除機だと喉まで差し込むには直径が大きいという問題もありますが、隙間などを掃除するための細めのノズルを使ったり、または相生市消防本部と兵庫県立姫路循環器病センターにより開発された『IMG吸引ノズル』という専用の器具も販売されています。

この器具は、発売元のサイトによると次のように使います。

  1. 掃除機のスイッチを入れます。
  2. 吸引ノズルのゴム球を掃除機の先に当てます。
  3. 口を開けさせて、ノズルを口の中に5cmぐらい入れます。
  4. ノズルを入れたら口と鼻を手でふさぎます。約2~3秒で口からノズルを抜きます。
  5. 1回で取れない場合は、2~3回繰り返してください。
  6. それでも取れない場合は、直接ノズルを異物に近づけて吸引します。

※スイッチを長く入れると吸引力が強いため、自発呼吸ができにくくなるのでご注意ください。

IMG 吸引ノズル

お雑煮の餅とかで粘りついてしまったときにうまく吸い出せるかが、賛否両論の争点なのかな。

2011/01/01

明けましておめでとうございます

新年明けましておめでとうございます。

昨年は少し更新間隔開けてしまいましたが、今年は(今年こそは?)もう少しまめに更新していこうと思っています。でも、毎年そう思っているような気がするのですが(汗)。